製作:Terios 発売日:2000-08-10 原画:横田守 シナリオ:藤木隻 シナリオ:9 グラフィック:8 システム:6 総合:9 長所:テーマ 短所:面倒 種類:W_?? | 人間存在をテーマにした館物。ある事件をきっかけに自堕落な生活をしていた主人公の元に悪友から誘いが来る。それは、ある島で破格の報酬で医者をやらないかというものだった。そこに着いて見るとまるで中世のような生活が。館の主人は4人の中から専属のメイドを決めるように言う、破格の報酬、不思議な館、主人の目的はなんなのか?というストーリーで何故か、フィールドを移動して女の子達と会話をするという形式を採っている。かなり面倒でそこで起こるイベントもメイドの日常生活や、彼女達の生い立ち、絡み合う思惑の一端を小出しにするという内容ばかりで大した面白いものではない。フィールド移動も面倒で、フラグ建ても非常に難しい、それでもそのストーリー、設定、コンセプトには一見の価値がある。人間はいつから人間になるのか。人間は何故人間になれるのか。束縛は本当に不自由なのか。そんな所だろうか。ただこれはそこかしこに小出しにされるか、最後に出てくるだけで、ストーリーの大半は絶大な権力を持つマフィアのドンの目的に翻弄される主人公達を描いている。良く死に、必ずしも幸せにはならない。そんなダークで神秘主義の匂いをふんだんにさせたストーリーだ。詳しくはネタばれで。さて、システムはすでに書いたがフィールド移動が非常に面倒だ。特に隠しイベントがあるわけではなく、目的のヒロインを追いかけるだけで他の女の子に話しかける必要はほとんどない。それなのに毎回どこにいるか探し回るのは苦痛以外の何物でもない。しかも、かなりシビアでなかなか目的のエンディングを迎えさせてくれない。セーブできる場面が限られているのがそれに拍車を掛ける。スキップや回想、鑑賞などその他のシステムについては当時の標準的なものが全て入っていて特に不満は無い。絵については原画家の名前を見れば言う事はもうない。手抜きなどない丁寧な絵だったと思う。枚数も全て合わせて356枚と不満はなく、Hシーンも妄想から奴隷、純愛まで各ヒロインに数種類用意されている。ただ、メインのメイド4人のほかのメイド(一人除く)にはCGが一枚も用意されていない所か、ストーリーに全く絡んでこないのはちょっとびっくり。毎回フィールドで話が出来るようにしてあるのが、かなり不思議だ。声や音楽、その他についてはまぁ悪くも良くもないだろう。とにかく原画家が人気ではあるが、そのテーマが気に入った。歴史やオカルト、宗教、医学、国際情勢に対する基礎知識は必要だが、まぁ一般レベルでなんとかなる。悲しい物語が多いが、是非やってもらいたい。(これほど評価が高いのは、ちょうど考えていた事と重なったからだ。そうでなければもう少し評価は低かったかもしれない。)(以下ネタばれ。非常に謎というか、その後の展開に含みを持たせた終わり方が多い。ヘレナのラストは何故あんなに物悲しいのか、それは主人公が死ぬからだろう。ただ文章からは、ヘレナがもう帰ってこないとも読み取れる。だが、そんなことは考えられない。ヘレナは狙われていないのだから。そう考えるとやはり、主人公が見つけられそうになったのを察知してブルーノが手紙をよこしたのだろう、なんにしても悲しい終わりだ。マナはそれに反して明るい終わり、それまでと対比するように明るかった、何一つ問題などないように。彼女の闇は良くあることなのだろう、世界の中では。違うところがあるとすれば、彼女も姉もあまりに優しすぎる。井戸の周りに地雷がある事は常識だろうに、そこに水を汲んできてくれる、姉。吹き飛んでも助けを呼ばない姉。・・・・。そうそう、さすがにその描写はないが、死体姦が出てくる非常に珍しいシナリオだった。フローリィは謎を全て解いてくれるお話だ。何をやろうとしていたのか、何があったのか。エリュシオン、仏教風に言うと極楽浄土と言えばいいのだろうか?その名前の意味も分かる。彼女はもう人ではないのだろうか、何故あそこまでやさしくなれるのか、そこがいまいち分からないが悟りを開いているのだろうと納得してみる。人の背負う事の出来る罪の重さはどこまでか、赦される事に対する恐怖。そんなものを題材にしたこの業界では希有な作品だろう。メインヒロインの4人のシナリオははっきり言ってどうでも良い。ミレイの見所は主人公の期待された役割が明らかになるだけで、特にない。クリスは兄であるソードとの関係と実験の断片を教えてくれるに過ぎない。ジェーンは実家のマフィアと彼についての事、この彼に会うエンディングはこの後どうなったのかそこが今もって謎だがそれ以外ではどうでもいい。ディアナでは、その身の上話と、彼、そして立ち絵すらなかった子供ルーシーの素顔が分かる話だが核心には触れていない。4人ともテーマは同じ縛られる事と愛される事その二つについてを扱っている。そこに多少の独自色と謎の断片を織り交ぜているに過ぎない。マリアもいたにはいたが、存在価値ゼロのストーリーで何がしたかったのかいまいち分からない。やはりこの作品の見所はサブヒロイン達の物語にあると思う。宗教色が強いがそれは、ユダヤのホロコーストを題材にしているせいもあるだろう。世間では、絶対的に信ずべきもの、信じる事が出来るものを持てる事が宗教の強みだという。それが無いことはどれほど不安定で脆い事か。しかし、宗教的信念は必然の上には成り立ってはいない。信じない事も実は出来るという微細な可能性を含む事でそこに意志の力が働く、それこそが宗教的なものの強みなのだ。とまぁこんな所から派生した設定だと勝手に解釈した。どちらにしても、細部までその世界観がにじみ出ている、本当に良く作られた作品だと思う。)(錬金術師というとすぐパラケルススを出すのはどうかと思う・・。プレーヤーにも馴染みの人物だとは思うが、あの絵と題名を見たら簡単に分かってしまうのはちょっと・・・。ホムンクルスを言い出したの彼だし、賢者の石を生成したとか、彼の剣には悪魔が住んでいるとか、いやそうではなく欠如した男性の補完だったとか、虚言症で辞書に載ってるとか、まぁ実際は単なる医者だったとか色々逸話も多いので使いやすいのはそうだが・・・・。) |