製作:Force 発売日:2000-07-15 原画:月永真洋 シナリオ:深沢 豊 シナリオ:8 グラフィック:5 システム:5 総合:7 長所:ストーリー 短所:難しい 種類:W | 緻密に仕立てられた物語。謎の館に閉じ込められた主人公と3人の少女。2つの設定が違う物語では、それぞれ違った趣で物語が進行する。1つは「向こう」の組織に命令され嫌々ながら少女達を陵辱しようとするが奇妙な出来事が続き、もう1つでは家族のような絆を暖めながら「冬になったら迎えに来ます」という書置きを信じて救出を待つ。最後の最後まで何がなにやら分からないが、分かってみると計算されていることに驚く。そんな、「2nd LOVE」同様の作り。ただ、前作同様、そこに行き着くまでが詰まらない。閉鎖空間という限られた場所で、目的を与えられた主人公達のとる行動や出来事は種を知りたいという好奇心は刺激されるが、設定ありきで変化に乏しく、象徴的には多くが練りこまれているが、内面描写に欠けている。そして難しい。進行状況によって新しい選択肢が追加されたり、先を読んでいることによって答えが分かったり、どこが追加されているのか、どこで文字入力すればいいのか悩む場面があった(ただヒントは用意されている)。CGや音楽、システムなどは4、5人でしかも絵以外各1人で担当していることなので贅沢は言わないが、良くて並といったところ。CGは1人16枚前後(内Hが12枚前後)しかなく、Hや他、ストーリー以外の点では何も期待しない方が良い。好きな人にとっては、そのストーリー構成の妙に惚れ込むことだろうが、そこにそれ以上のものを見出すのは極少数だろう。(プレー時間は5時間ほど。)(主要メンバーの2人は、「LANGuex」として同人でゲーム作りをやっているようです。)(以下ネタばれ。時に話題になる、極限下での食人行為。映画にもなった飛行機墜落事故では、被害者が救助ヘリの中に人体の一部を持ち込んだという。理由は、お腹が空いた時の為に、だそうだ。そんな異常な状況で狂ってしまった主人公の架空世界、物語の中の登場人物の1人として治療をするという設定のこの物語。全てが、明らかにされてもなおいくつか謎が残る。どこからが現実なのか。物語を物語と認識している主人公が、現実に戻ったであろうトゥルーエンドでホテルについて言明している。ホテルは物語の中のもので現実にはないはずだ。全ては物語の中なのだろうか?そして、最大の謎は日向の存在だ、彼女の実在はトゥルーエンドが現実なら確か(そうでないなら夕香里の中の彼女?)だが、主人公を逆恨みしている彼女をそれと知りつつ何故治療に参加させているのか。そもそも夕香里とそして、館の元の主人、娘との関係が分からない。主人公が夢に見たように夕香里が娘であり、日向が語ることから主人は日向の父親なのだろう。そうすると、娘は日向ということにもなる。いや、1人1役ではなく、私たちの世界になってしまっていると考えるのが普通か。主人の罪悪感は主人公や夕香里の罪悪感や日向の父親がしたそれでもあるのだろう。暗号も、深紗の事、そして治療の事が重なっている。その結果として地下に封印されていたものが飛び出す。色々な意味が色々な物に含まされている。その構成力とでもいうべきものは、この業界でも並ぶものがないのではないか。伏線はこちらが把握するものより多く、その全てが拾われている。考えれば謎も解けるだろう。ただ、その楽しみは限定的だ。深紗の、そしてそれに対する愛は感動を呼ぶかもしれない。ただ、前に進むため物語全体としては彼女との愛は捨て去る過去にすぎない。そして、彼女以外のヒロインの顔ははっきりとしない。) |